10年続いたもの、続かなかったもの

思えば、プログラミングを初めてからもう10年以上が経つ。なにか特別な目的があって始めたわけではないが、好きでやっていたらいつの間にか時間が経ってしまっていた。
というようなことを Twitter でつぶやいていたら、いろいろ反応があったので、これを機会に、10年続けられたものと続けられなかったものについて考えてみようと思う。

音楽

小学校時代には吹奏楽でトランペットをやっていて、腕前は悪くなかった。しかし中学に入ったときに吹奏楽部の演奏レベルの低さから、入部を断念し、辞めてしまった。
ピアノは小3から6年くらい習ったが、たいして練習しなかったので上達しないまま、高専の寮に入ったのをきっかけにやめてしまった。
ギターは中学時代にすこしだけかじったがものにならなかった。
一番熱心に取り組んだのは DTM で、これはピアノやギターのように指先の鍛錬を必要せず、またエンジニア的な要素が強いため、のめり込んだ。シンセのツマミをいじったり、PC でピアノロールを打ち込むのが楽しいと思えた。しかし大学に入ったときに、金に困ってシンセ一式を売り払ってしまった。
小さい頃から楽器を触ってきた俺としては、音楽的素養は無いわけではないと思ってる。しかし、音楽というものに対してあまり執着がない事に気づき始めている。No music no life だのと謳っている奴は何人か知っているが、そういう連中の音楽に対する思い入れはすごい。俺はそうはなれない。
音楽は10年取り組んでいるが、もうブランクが長すぎるし、この先また再開するのかも分からない。

ブログ(日記)

1999年、高専1年のときから、HPを運営し、ウェブ日記を載せていた。
当時はまだ「ブログ」という言葉は無かったが、日本では日記サービスなどが流行っていた。俺もそういったサービスにも恥ずかしい日記を書いていた記憶がある。
めんどくさがりで飽きっぽい俺だが、自分自身のことを記録するのは好きで、Twitter などがしっくりきている。大学でも体験記録を研究テーマにしたほどだ。
大学院に入ってから最近まではほとんど日記を書いておらず、空白の期間が長い。研究が忙しかったのと、精神的にまいっていたのもある。
今年の春にウェブ業界に就職し、状況は変わった。ブログを書くことが業界へのアピールになるからだ。文章を書くのは辛いが、意識的に続けていかなければならない。

小説

小説を最初に書いたのは17歳のころ、高専3年のときである。ほとんど小説など読んだことが無かった俺が、桜井亜美の小説を友人に借り、「これなら俺でも書ける」と思ったのがきっかけである。
意外なことに、小説はしっくり来た。読書歴が少なかったのがかえって良かったのかもしれない。
大学では文芸サークルに入り、その中では一目置かれていた(つもり)。正直、有名な賞がとれるようなレベルでは無いが、仲間内で楽しめる程度には書けるようになった。
小説は、金が掛からないところが趣味として優れている。DTM はアホほど金を食うし、世の中の趣味はたいてい金を浪費しなければ成立しないようになっている。小説は違う。紙とペン、贅沢を言えば PC とプリンタがあれば足りる。プロと同じ環境を用意するのにほとんど金が掛からない。
また、小説について気に入っている点として、小説というものが本質的にディジタルコンテンツであるという点が挙げられる。いかなる優れた小説であっても、紙に印刷されたものと、PCのディスプレイに表示されているものを比べても、コンテンツの質は変わらないからである。
ほかの芸術ではそうはいかない。絵画は、まったく同じに見えるものであっても、レプリカではコンテンツとしての価値が下がる。音楽に至っては、再生する環境によってコンテンツの質が大きく変化する。
一般に、文字の造形は文章の質に影響しない。猿に無限時間ワープロを打たせれば、シェイクスピアを書きうるという証明があるそうだが、猿が書いたシェイクスピアも、シェイクスピア本人の文章と同様の価値を持つだろう。

なにが言いたいかというと、小説は、指先の鍛錬や高価な環境を用いなくても、文豪と同様の価値を持ったコンテンツを生み出しうるというところが気に入っているのである。

いまは休止しているが、小説は次の10年も続けていくだろう。

プログラミング

小学校の頃、実家のPC98に、雑誌に書いてあった BASIC を打ち込んでいたが、意味はまったく分かっていなかった。プログラミングの意味が分かったのは中学の時である。当時学校のパソコン室に FM-TOWNS というマシンがあって、LOGO Writer2 という日本語 LOGO の環境が入っていた。日本語で記述する奇妙な言語であったが、のめり込み、ゲームなどを作った。
そのまま高専情報工学科に入学し、さまざまな言語を学んだ。Pascal, C, C++, Lisp, Java, JavaScript,VHDL, Fortran,...
娯楽が他になかったというのもあるが、高専のころ、プログラミングが本当に好きだった。授業中にも授業を聞かずプログラミングの本を読んだし、課題ではいつも真っ先に書き上げていた。

10年休まずに続いているのは結局のところプログラミングなのだ。
同年代のプログラマに比べても、高度な技術や知識を持っているわけではないし、これといったプロダクトも無い。
しかし好きでやってきたプログラムで現在飯を食えているのは本当に幸せだと思う。学生時代に学んだことを仕事に結びつけられなかった人間がどれほど多いことか。

次の10年、次の次の10年

小説にしろ、プログラミングにしろ、「10年続けてやる!」といって努力してきたわけではない。なんとなく楽しくて取り組んでいたら、いつの間にか10年経っていたというものである。10年続けられるのはそういうものだけである。楽しいものしか残らない。
総じて言えるのは、俺はものを作るのが好きなのである。結局のところ、俺は創作から逃れることはできない。じいさんになっても何か作っているに決まっている。